スポーツベット合法化の議論が明るみに

Lim-Chang-Yong

日本におけるプロ野球やサッカーを対象にしたスポーツベット合法化の可能性が28日、ファイナンシャルタイムズ(Financial Times = FT)により突如報道された。

報道によると、特定されていない「政府関係者」が昨夏、電通社に日本における主要スポーツの賭博に関する報告書を極秘依頼したという。昨年9月に電通は報告書を提出し、FTによると合法化に向けた内部での議論が進んでいるとのこと。

FTは更に民間セクターからのロビー活動にも触れ、新経済連盟を介して楽天が昨年12月にスポーツベットを解禁することを求めたことを伝えた。

また、FTの記事にはいくつかの興味深い点もある。モバイル開発で知られるMixiなどが、野球とサッカーのスポーツベット合法化が既存の公営競技に加算された場合、日本のスポーツベット市場全体は約7兆円規模になると試算した。

また、日本のプロスポーツに対する違法賭博を行う海外のオンラインスポーツベットやオンラインカジノは4兆3300億円前後の売上をあげているという。

今回の議論の発端は、新型コロナウイルスにより多くのスポーツチームが経営困難に陥てることが影響していると思われる。

ベイシティベンチャーズ社の國領城児氏によると「新型コロナウイルスが日本に上陸して以降、日本プロ野球(NPB)やJリーグのチームは特に経営が苦しくなっているのは事実です」とAGB Nipponに話した。

「日本一の人気を誇るプロ野球のセントラル・リーグでは、去年の観客動員が前年から78%落ちています。チケット売上や来場に起因する飲食やグッズの販売が全体売上の半分以上を占めるところもあると考えるとこれは死活問題です。

普段は書き入れ時となるゴールデンウイークも今年は地域によっては5000人または収容キャパの50%までしか観客が入れず、緊急事態宣言対象地域に限っては無観客での開催を強いられています」と國領氏はスポーツ界の現状を説明する。

日本が新たにスポーツベットに着目しているもう一つの理由は、2018年5月に米国最高裁が1992年の「プロアマスポーツ保護法」を破棄する判決を下した以降、米国でみられるスポーツベット産業の爆発的成長力もある。

FTの記事には最短で2024年に日本でスポーツベットが解禁されると述べているが、最大な反対勢力となる大衆の声には触れていない。

國領氏が「スポーツベットは古くから日本ではタブーであり続けていたものです」と語るように、IR整備に対する反発を参考にするとこのような大きな政策は簡単に受け入れられると楽観視は出来ない。

FTは日本国内における態度の変化などを前進の理由にあげるが、数人の政策立案者などがそう思っていても、社会全体の意見ではないのは確かである。

この点において國領氏は「今回スポーツベットを推進している企業はスポーツチームを所有する先進的なIT系企業であるのは注目するべき点です。政治的や社会的なハードルはもちろん、伝統を重んじる讀賣グループなどのチーム所有者を説得するというチャレンジもあります。日本のスポーツチームは個人ではなく企業が所有するケースが殆どのため、関係する全チームがスポーツベットに賛成するまでは長い道のりになります」と冷静に解説している。

話題となっているFTの報道は、日本の賭博史において革命が起きた瞬間ではなく、長く間議論されていなかった旬な話題が公になったと捉えることが正しいといえる。(AGB Nippon)