菅総理誕生でIR開発にブレーキか

次期総理大臣の大本命が菅義偉官房長官であることは、日本のIR推進派にとって朗報である。しかし、首相官邸が堅実なIRのサポーターだとしても、政府がIRにブレーキをかけようとする要素も多く存在する。

安倍総理が降りるのであれば、代わりが菅官房長官になることはIR推進派にしては最高な結果である。菅氏は約8年間、安倍首相の右腕であり続け、IRに関する政策決定の大部分を見守ってきた。

与党のその他有力候補が首相の座に就いたとしても、IR開発には好意的な姿勢を持っていただろう。しかし、菅氏ほどIRに「身を投じている」人物はいない。

さらに、直接的な公的根拠は明らかになっていないが、横浜の林文子が政治的評判を犠牲にしてまでIRレースに参加させたのは菅官房長官であると言われている。菅氏は神奈川県を本拠地とする議員で、同地域に国で最初のIRの1つを建てることを強く望んでいる模様。

しかしながら、首相になってからは自身のIR賛成志向の傾向とIR開発のタイムラインを遅らせる要因となる政治的および実際的な事柄とのバランスをとる必要がある。

菅氏が自民党の総裁選で決定的な勝利を収めることは予想できるが、国の指導者としての菅総理の誕生は、少数の与党幹部によって準備された内部決定に過ぎず、世論の影響は皆無である。実際、世論調査では、一般的にはライバルの石破茂氏を大幅に支持していることを示している。

菅氏が9月中旬に首相に就任した直後は、国民が新しい国のリーダーに対する期待度が上がり、支持率は上昇すると予想できるが、最初のハネムーン期間には手に入れるにか弱いサポート体制はすぐに消え去ることもありえる。

菅氏は首相として2021年10月までに衆議院総選挙を行う義務を負う。暫定的な指導者で終わらないためにも、この大きなハードルを越えには大衆の支持を得ることが優先事項となる。

衆議院選が来夏以前に行われると想定すると、次は2022年の参議院選挙に注目が向けられることになる。

話をIRに戻すと、菅氏が現在のスケジュールに従ってIR開発を進めると信じている人々は、新首相が2年以内に2つの国政選挙に直面している中、非常に不人気な政策を世界的なパンデミックと国家経済崩壊の最中に積極的に推進することを信じる必要がある。

これは非常に困難な課題である。与党の過半数を維持して2つの国政選挙を生き延び後の2022年の秋頃に、菅氏が推進するIR開発政策を再開させる方が理にかなっているかもしれない。それまでは、新聞の見出しからIR問題をなるだけ離しておくことが最善策である。

また、主に新型コロナウイルス(Covid-19)のパンデミックに関連して、IRのプロセスにブレーキをかけるべきである、非政治的な理由もいくつかある。

過去数週間、これらの理由を述べてきたので留まる必要はないが、世界中の多くのゲーミング企業が財政的損失を被っている中、新しいプロジェクトに数十億ドルを投資することを期待するのには最悪の時期である。絶対的に有望である日本市場でも、疑わしい規制体制が作り出され、これら企業が投資を回収し、リスクに見合った利益を生み出すことがほぼ不可能になっている。

しかし、数年の遅れがあったとしても、今でも実行できる重要な準備段階は少なくない。

たとえば、IRに関する日本国民の最大の懸念は、依然としてギャンブル依存症の問題。安倍政権は象徴的な法案を可決したが、この問題への取り組みには目立った進展がみられない。率直に言うと、政府はこの問題に無関心であるように思われる。 IR開発自体が足止めを喰らっている最中、日本国民のために強力な依存症防止のフレームワークを作ることは政治的に意味があり、優れた公共政策にもなりえる。

菅政権は全てを迅速に行うことができないかもしれないが、創造性と先見の明を示すならば、まだ道を正すことはできる。(AGB Nippon)