横浜IRの最終決戦が始まる

予期せぬ出来事が起きない限り、2021年は横浜にとってIR誘致の是非を問う戦場と化すことが明らかであり、その他の公共政策が二の次になる時期が訪れる。

横浜市の林文子市長は2021年8月で任期満了となる。新型コロナウイルス(Covid-19)の影響が出る前までは、政府への区域認定計画の申請期間が2021年の1月から7月まで。スケジュールがこのままであれば、2017年に「白紙」としながら当選後に有権者の反対を押し退けて推進してきたIR誘致を政府への申請まで見届けるはずであった。

しかしパンデミックの影響もあり、区域認定計画の申請期間が新たに2021年10月から2022年4月まで伸びたことにより、申請までに再び有権者の支持を得る必要がある。

そして今週、カジノに反対する住民投票を目指す団体が、条例制定の請求に必要な6万3000人の3倍を超える約20万5000人の署名を提出した。

もし、区域認定計画の申請期間が9か月遅れることがなければ、林文子市長は今までの行動を見返せば住民投票の結果を尊重しなかったと考えられる。ただし、今はそうは出来ない。だからこそ今は住民投票の結果を尊重するとスタンスを変え、個人としてはIR誘致を撤回する考えを示している。その場合、横浜IRにおいては8月の市長選よりIR誘致の是非を問う住民投票が決戦の時になる。

もし住民投票が予想通りにIR誘致反対の結果を残し、林市長が約束通りに誘致を撤回した場合、市長選ではIR以外の政策が論点のなり、林市長が立候補すれば再選の可能性も出てくる。

住民投票の結果が万が一IR誘致賛成で終わった場合、林市長にとっては好都合となる。反カジノ勢力に完全勝利し、再選への障害が無くなる。

今後一番可能性が低い展開は、住民投票の結果がIR誘致反対に終わりながら林市長がIRに関する最近の発言に反し、誘致を押し続ける流れである。その場合は市長選での反カジノ勢力との決戦が待つ。物事がこのように進めば、結果を予想することは難しい。野党勢力が統一した形で有力候補を立てる能力が基本的には無いが、横浜の市長選の場合はこの政治的な転機を逃すとは思えない。

住民投票のタイミングが市長選の数カ月前に行われる時間軸では、今週、横浜港運協会前会長の藤木幸夫氏がIR賛成の候補者を支援しないと発言したことは選挙時には論点になっていないこともあり得る。菅義偉総理大臣が総選挙を呼び掛けない限り、横浜IRの運命は大きな選挙が行われる前に解決している可能性が高い。(AGB Nippon)