菅首相の政治的評判が急下降

政府が延期したIR区域整備認定申請期間が来年の10月に開始するが、その時に菅義偉首相が首相の座に君臨していない可能性が出てきている。

総裁選で与党の支持を集め、2人の候補者を簡単に退けた日からまだ3ヶ月しか経過していない。

当初は70%に近い支持率を記録し、幸先いいスタートを切っていたようにみえた。

しかし、初期の優位な政治的立場からの急下降ぶりはただごとではない。

まずは結論から言うと、安倍晋三前首相の右腕として活躍した執行人の菅氏は政治的本能が弱く、国のトップという役職にうまく馴染んでいない結果となっている。

安倍前首相は野党が弱った瞬間を察知し、すぐさま解散総選挙を容赦なく実施した。2012年12月に圧勝し首相として4年の任期を得たにも関わらず、野党の体制が弱まったと読んで2年後の2014年の12月に再び総選挙を行った。

立憲民主党がまだ再結成されてなく、首相に就任した直後の好機に解散総選挙を実施しなかったことが菅首相の最大な誤算になるかもしれない。今となって総選挙のタイミングに関しては任期満了が迫っているため罠にはまってしまっている。

今回の自民党総裁選での勝利は3年の任期を得た訳ではなく、安倍前首相の任期の最終年を引き継いだにすぎないため、来年の秋以降も首相の座に残るには、まずは遅くて2021年9月に再び与党内のライバルに打ち勝つ必要がある。その後、10月までにはまとまりをみせている野党と総選挙で争わなければならない。

そのためには来秋までは支持率の上昇と与党の立場を守ることが重要であるが、現時点では両方が弱まっているのが事実。

就任後の蜜月期間を台無しにした最初のミスは日本学術会議の会員候補任命拒否だった。政府広報を読み解くと、会員候補6人が任命拒否された理由として、以前に安倍政権の政策を公に批判した人物であったからという理解が浸透した。このような狭量な執念深さを表す行動と説明責任を果たそうとしない姿勢こそが、新内閣に対する不安を煽り始めた。

最近では新型コロナウイルスの第3波に効果的に対応することなく、特定の判断や行動を全く説明しない姿勢が菅政権の代名詞となりつつある。また、菅首相が掲げる「自助」という社会像は国が危機に直面している現在、国民の期待から大きくかけ離れている。

『Go Toトラベル』の一時的な停止をやっと判断したが、それも数週間後に迫った年末年始の期間に限る。このタイミングと期間の判断を評価するものはいなく、皮肉にも菅首相の強力な支援者であり、『Go To』を推す全国旅行業協会会長でもある二階俊博幹事長との溝を深めたようだ。

3ヶ月前、影響力と権力が最高潮に達していた時期でも、菅首相は安倍前首相のような政治的命綱を持っていなかったのは明らかであった。政治家系の一族ではなく、ある意味では外様である。安倍前首相は最大の派閥、菅首相は無派閥。支持率低下が続けば各派閥は自ら総裁候補をたたせる準備を始める。日本のメディアでも『ポスト菅』の議論が始まっていることを明確にしている。

毎日新聞の最近の世論調査では、菅内閣の支持率17%減で40%、不支持が49%という驚くべき結果となった。ほかの調査はここまで支持率が極端に下落していないが、共通するのは菅首相の支持率が急下降していること。

気候変動対策や行政サービスの電子化など、国の未来を考える効果的で価値のある政策もある。しかしこれは同時に来たる1年の政治的な山場を越えるために政治的地盤の構築を強固にすることを考えていない人物を映している。公共の場でのコミュニケーション力不足も足枷となり、首相として生き残れないようにみえる。

日本のIR整備に関しても、確定要素にみえる物事も実は不確定な部分が残っているのかもしれない。2021年に新たな首相が誕生したとしても、IR賛成派である可能性は高いが、安倍前首相と菅首相と異なり、IR整備の発起人であるとは限らない。すなわち、IR政策を編み出したのではなく、国策として継承している人物になるということだ。(AGB Nippon)