麻生泰が長崎IRの誘致を後押し

Nagasaki

長崎のIR誘致の挑戦に今までいなかった国政界のトップの味方がついた。

長崎県には国政や与党の幹部などがいないため、このようなパイプを築くことは誰も予想していなかったが、長崎のIR誘致に九州地域全体を巻き込んだ一つの大きな成果が見えた。発足された九州IR推進協議会の会長には福岡出身の麻生泰氏が就任した。

麻生泰氏は政治家ではなく実業家として麻生セメント株式会社の代表取締役会長。元内閣総理大臣の吉田茂氏の孫、元内閣総理大臣の麻生太郎の弟でもある。

2008年から2009年まで続いた麻生政権は短く成果も残せなかったが、今になっては昔の話となり、2012年12月以降は副総理大臣兼財務大臣として麻生太郎氏は未だ影響力を持つ。また、麻生太郎氏は与党である自由民主党内の大きな派閥を率いっており、その傘下には次期総理大臣と呼び声高い河野太郎氏もいる。

「九州IR」の顔に麻生泰氏を置くことは今後大きな意味を持つ可能性がある。特に多大な影響力を持つ兄の名前は地域全体に有益なIR政策と合致する。

現時点でIR誘致を正式に手を挙げている4か所の候補地それぞれに国政の顔がついていることは偶然の産物ではなさそうだ。

菅義偉総理大臣は横浜を選挙区に持ち、同市のIR誘致を後押ししていたこともある。物的証拠は無いにしろ、菅氏の影響で林文子市長はIR誘致に踏み切ったと囁かれている。皮肉にもこのIR政策が林氏の政治キャリアに終止符を打つかもしれない。

菅氏に次いで与党内で影響力を持つのは二階俊博幹事長である。二階氏は和歌山出身で、観光業との深い繋がりも周知の事実であり、和歌山県のIR誘致にも影響を与えている。

国の二番手となる麻生太郎副総理大臣兼財務大臣は長崎IRと繋がりを持つ。

この観点では大阪は劣っているとも言えるが、時には政府与党と保守寄りの協力者にもなる大阪維新の会が府市を牛耳っている。また、大阪の松井一郎市長と現総理大臣は良好な関係を持つ。

現時点のスケジュールでは2022年の夏にIR整備を許可する区域認定地域を3カ所選ぶ予定。

政界の動きとして非常に興味深い点では、名前を挙げた政治家の中で、2022年に今と同等以上の影響力を持ちそうなのは麻生太郎氏のみである。他の3名は政治的ピークを過ぎたようにみえるからだ。

菅総理大臣は今まで国のトップとして必要なコミュニケーション能力やカリスマ性を発揮できていなく、この秋以降も首相の座を守るには多くの山を越える必要がある。複数な選挙戦を今後控えているため10月以前に首相の座から降りる可能性が高い。

このような事態が起きると、横浜と大阪は国政との大きなパイプを失う。

二階氏に関しては与党内では幹事長として長く居座っている事実といくつかの政策に対する不満が聞こえるようになっているため、今後も幹事長として君臨する可能性もあるが、今回こそ長年勤めた役職を追われる可能性のほうが高い。

特に当時官房長だった官氏を安倍晋三元総理大臣の後継者に指名したのが二階氏であり、与党として結果的には最善の策ではなかったことが明らかである。

この流れとは別に、麻生太郎氏は来年にはさらに強力な位置にいるかもしれない。8年間続いている副総理大臣兼財務大臣の在任期間が長すぎるという声もあるが、麻生派の河野氏が影響力を増すと、今まで二階氏が菅氏を支えてきたように、麻生氏も総理大臣を支える重要な役割を持つことが考えられる。

もし麻生太郎氏が首相となった河野氏に弟がいる九州に区域認定を与えるようにささやいたと仮定すると、否定されることはないとも思える。

もちろんIR区域認定に関して国政は影響を及ばすことがなく、最良の区域認定計画を提出した自治体に認定が与えられるともいえる。

実態を知ることは出来ないが、今までIR政策を進めてきた国の動きから読み解くと、影響はないとはさすがに言い切れない。このような事情があったとしても、長崎IRの関係者は九州IR推進協議会会長に麻生泰氏を迎え入れたことは優位に働くことを理解しているようだ。(AGB Nippon)