大阪夢洲IRの孤独な日々

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以前は最も期待値が高かった大阪の夢洲IRだったが、今となっては音沙汰がなくなってしまった。

もちろん今後MGM・オリックスのコンソーシアムと大阪がIR区域認定を取得し、建設などが始まれば再び脚光を浴びる日は来る。現在失われかけている勢いと活気が戻ってくる可能性はあるが、2021年の中間地点を過ぎた今、盛り上がっているは言い難い。

違う意味で盛り上がりをみせている大都市型IRの候補地は横浜市だ。8月22日の市長選の結果次第で、日本最大のIRが関東か関西になるのかも決まる。横浜のIR誘致が取りやめとなれば、大阪は再び注目を集めることとなる。

しかし大阪IRが孤独な日々を過ごしているのは単純にメディア関心の低下が唯一の理由ではなく、地元経済界の態度にも変化が見え始めている。

フル回転していた2年前、関西の多くの大企業がIRに関わるために動き回っていた。経済団体のリーダーが支援を表明し、鉄道会社を筆頭に大手企業が独自の夢洲開発案を作り上げ、デベロッパーや建設会社などは社内のIR専門チームを立ち上げていた。

この大阪IRの停滞期には主に4つの関連する要因がある。

一つ目は2019年にIR誘致を表明した横浜の存在だ。横浜のIRレース参入を表明した直後、さらに期待度が高い関東市場に狙いを変えた大手IR事業者の多くが大阪から撤退した。結果として大阪のIR事業者公募に参加したMGM・オリックスのみとなり、大阪の行政は交渉の席におけるレバレッジを失った。

次に挙げられる要因は自ら招いたものである。大阪は当初、2025年の世界博覧会までの開業を目指していたため、IR事業者の観点からは非常に難しい開発スケジュールを要求していた。この件においても2019年12月には万博前の開業を正式に諦めたが、多くの事業者は既に去っていた。さらに長期的な問題として大阪万博と大阪IRの相互効果自体も薄れてしまった。

3つ目の要因は政治的な影響である。2020年12月、府市を牛耳る大阪維新の会の目玉政策であった大阪都構想が2度目の住民投票にかけられたが、僅差でありながら否決となった。松井一郎大阪市長は結果を受け入れ任期満了となる2023年4月には政界からの引退を表明し、いわゆるレーム・ダック市長になってしまった。IRに関しては政治的な不確定要素が生まれてしまった。

そして最近の出来事がこの停滞感を最も表している。大阪市は建設中の夢洲駅周辺の2000平方メートルほどの敷地の整備を行う事業者を公募していが、応募者はまさかのゼロ。

一時期は大盛り上がりだった夢洲開発だったが、今の状況に陥ったのも不思議ではない。2025年の大阪万博のあと、何年経てばMGM・オリックスのIRが開業するのかが誰も分からない。その期間中、建設や輸送会社の従業員以外は夢洲を訪れる理由がない。

さらに言えば、夢洲にIRが建設されるかどうかも数年前のように確信をもって断言できない。1年後には状況が好転しているかもしれないが、現状も無視は出来ない。

MGM側が正式に基本協定にサインし、大阪が区域認定を得るまでは大阪夢洲IRはまだしばらく孤独な日々を過ごし続きそうだ。しかし大きな進展があれば再び興奮と熱狂が戻ってくるかもしれない。(AGB Nippon)