横浜IRの是非、住民投票へ向かう

    横浜市民を対象にするIRの是非を問う住民投票がこのまま実施された場合、日本最大級のIR開発プランに終止符が打たれることになる。

    実際問題、重要な要素の1つが大きく変化しない限り、この結論は避けられることはない。

    以前に本誌で報道したように、現在横浜では二つの「反カジノ」を訴える署名活動がほぼ同時に進行している。

    IRに対する二つの市民運動のうち、当初は林文子市長のリコールを求める署名活動が脅威にみえた。この手法の発起人たちは、林市長が市長職に就いている限り、世論の意見には耳を向けることなくIR開発を進めるであろうと主張した。林市長の今年初めのスタンスと振る舞いを考えると、この市民の見解は合理的である。

    しかし、市長のリコールを請求するために約49万の有効な署名を2ヶ月以内に集める必要があり、こちら署名運動は高いハードルを越えられそうにない。先週の中間点では、約4万1000の居住者の署名しか集められていないと発表された。したがって、林市長はリコール運動を恐れる必要はないといえる。

    一方、もう片方の反カジノ団体の状況は真逆である。こちらの団体は、比較的低いハードルである約6万人の署名を集めることにより、IR誘致の是非を問う拘束力のない住民投票の実施を目指した。そして11月4日に終了した2ヶ月の期間で、規定数の2倍を超す15万6000人以上の署名を集めている。

    また、林市長は10月中旬辺りからIRに対する姿勢の変化が見受けられる。先月開かれた記者会見で、市長は次のようにコメントした。

    「もし住民投票が行われ、IR反対が多数あれば、結果を尊重したい」。

    また、そのような結果が出た場合、市長は誘致を撤回する考えを述べた。

    ここが論理的な考えが避けられないように見える部分となる。来年、横浜でのIR誘致に関する住民投票は行われるであろう。殆どの世論調査ではIR誘致に賛成する声が少なく、横浜市民の大多数が誘致反対に投票することを示唆している。林市長は住民投票の結果を順守するかに関しては、今は誘致反対という結果を尊重すると述べている。

    したがって、このままだと横浜のIRイニシアチブは2021年の間に消滅するようにみえてくる。

    それを回避する数少ない方法は、IR誘致の賛成派が住民投票で奇跡的な勝利を収めるか、林市長が発言とは反対にかかわらずIR誘致を強制しようとした場合である。

    これら2つのシナリオのうち、後者の方が可能性として残ると思われる。特に深読みをする人物なら、林市長が自分への脅威となるリコール運動の勢いを妨害するために住民投票を尊重することを約束しただけであると仮定するかもしれない。どのみち、このような結果となれば、林市長がIR誘致の問題で住民をだましたのは初めてのことでもない。

    それでも、「二度目の裏切り」が起きた場合、地元住民の怒りは計り知れないものであり、林市長にとってIR誘致は政策としては非常に重要でありながら、政治生命の全てを賭けるほどの案件ではないと考えている可能性が高い。(AGB Nippon)