ラスベガス・サンズ(Las Vegas Sands)の会長兼CEOのシェルドン・アデルソン氏(Sheldon Adelson)は、最有力候補と言われながら日本のIRレースからの撤退を発表した時、言葉を選びながら日本市場に対する声明を残した。しかし先週行われた同社の業績報告会では遠慮をみせず、本音を明かした。
日本撤退を発表した今年5月、アデルソン氏は「日本の文化に対する愛着と観光地としての強さを賞賛する」など批判的な言葉を使わずに語った。長年熱心に求めていた日本IRの権利を諦めた理由を論じるとき、アデルソン氏は「IRの開発に関するフレームワークが、私たちの目標に到達できないようにした」しか語らず、アナリストや外部の者には真意を憶測させる形となった。
しかし、先週のアデルソン氏は、日本のIR政策に対する考えを率直に語った。
「国会が通し日本政府によって公布された規制は、必要とする投資を呼び込むには適していなかった。日本の建設費と土地のコストは非常に高額である。それは他の地域でも同様な条件では正当化できない。30億米ドル(約3140億円)、40億米ドル(約4200億円)に下がったとしても、彼らが話している規則のいくつか、特にカジノで勝った外国人からの所得税の源泉徴収などがあるので、大きな違いをもたらしたかどうかはわからない。」
更に詳しく話したアデルソン氏。
「外国からプレイヤーが来て、そしその人はカジノで勝つ。日本政府は、事業者が日本政府に支払う税金を源泉徴収することを望んでいる。それでは一人の外国人も呼び込めるわけがない。そして、税金は30%のゲーミング税、30%の法人税があり、そこから更に税金を引き上げないという保証はなかった。そのため、私たちが受け入れられる範囲を超えた否定的な規制が多すぎた。」
同社の社長兼最高執行責任者のロバート・ゴールドスタイン氏(Robert Goldstein)も同じように語った。
「シェルドンを始め我々以上に日本に参入したかったチームはいません。私たちは日本に対して非常に強気でした。多くの時間と資金を費やし、希望に満ちていた。しかし、そこにあった環境は、この会社が回収の面で要求する投資を行うには適切ではなかった。私たちはそれを実現させることができなかったが、確かに試みた。私たちは日本のために無限の時間と資金を費やった。今でもとどまることが出来ていればと思う。投資家にとってより歓迎的な構成があったことを願っているが、そういう状況ではなかった。そして今は、私たちが正しい選択をしたと安堵しています。」
これらのコメントは、安倍政権と国の規制枠組みを設計してきた人々に赤信号のアラートとして点滅するはずである。しかし、1兆円に迫る投資を呼び込むはずだったゲーミング産業の大手であるサンズのシェルドン・アデルソン氏とロバート・ゴールドスタイン氏が日本について何を言っているかについて、日本の意思決定者がほとんど把握していないという印象を持つにいられない。
ここ数カ月、AGB Nipponの分析の多くでは、同じようなテーマに戻ってきている。つまり、安倍政権はIR政策に関するリーダーシップを発揮できておらず、構築している枠組みは国全体のIRイニシアチブの政治的および経済的失敗を確実にしているようなものである。
日本の創始期のカジノおよびIR産業の基盤を形成する問題であるため、何度も繰り返し発信することを余儀なくさている。政治的および規制上の基盤が弱く、多くの穴があふれている場合、その上に構築されたものは、どんなに賢く、光沢があり、活気があっても、時間の経過とともにほぼ確実に崩壊する。
アデルソン氏はもう1つ重要なコメントをしました。「彼らが[否定的な規制]を変更した場合、私たち戻ることも検討します。」
日本が、おそらくマカオに次いで世界で最も優れたIR市場の1つを創出するための基礎を持っていることに疑いの余地はない。ラスベガス・サンズ以外の多くの事業者が依然として日本に留まっており、日本政府が何らかの形で既存の障害を巧みに乗り越え、事業者の利益に害を及ぼさない実行可能な規制システムを作り出すことを望んでいる。
しかし、その豊かな道は、日本が現在進んでいる方向ではない。(AGB Nippon)