日本の自治体はグローバル観点が必要

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日本政府のIR開発スケジュールが9か月ほど延期されたことに対して、IRに手を上げている自治体の反応と態度は明確に分かれた。まずは大阪の場合、今回の延期は「合理的」であり「歓迎」するという前向きな表現を使った。一方で、隣の和歌山県では仁坂吉伸知事がスケジュールの変更を強く非難した。 「県は当初の国の予定に従って一生懸命にやってきたので大変不満で遺憾だ」。

このように反応が割れる理由は多く存在するが、今回は各自治体のリーダーたちの情報源に関して焦点を当ててみる。

仁坂知事は、今回のコメントを通じて、間違いを犯したことを事実上認めているともいえる。非常に特殊な時期の最中、和歌山県は政府からIRに関する情報を入手していた。

IR開発に対する政府の意欲は弱まったことはない。さらに政府は申請期間を延期する予定も当初はなかった。

和歌山側は、政府との連絡を忠実に検討し、IR計画に大きな変更がないことを繰り返し確認していたと考えられる。仁坂知事が公の場で残した怒りのコメントは、知事本人は裏切りの感覚を感じていることを示す。

それと比べて大阪のリーダーたちは、今回の延期に過激反応することなく、必要であったことだと見積もっていた。より現実的な計画が開示されたことには納得していた。

ではこの反応の違いを説明する一つの要因は、和歌山より大阪のほうがよりグローバルなビジョンを持っていること。実情を理解するために政府に頼るのではなく、大阪はより包括的な視野を持ち、世界中の新型コロナウイルス(Covid-19)によるパンデミックの影響を予想していた。大阪の指導者たちは、夢洲のサイトの唯一の入札者であるMGMリゾーツやオリックスコーポレーションとも連絡を取り、これらの企業が現在直面している財政的課題をよく理解していた。

対照的に、和歌山は今年、興味を示していた事業者のニーズにほとんど無視しながら進んでいた。 バリエール・グループ(Groupe Lucien Barrière)とブルームベリー・リゾーツ(Bloomberry Resorts)は、地元コミュニティとのつながりを築くために何ヶ月も辛抱強く取り組んでいたがが、和歌山県が課した柔軟性に欠けるタイムラインを理由に脇に追いやられた。当時、パンデミックによる封鎖のため、各社の幹部は自宅から外出することも出来なかった状況であった。

最終的にはマカオのジャンケット産業を母体とするサンシティグループとカナダのクレアベストグループの2社のみが和歌山の扉に足を踏み入れることができた。どちらの企業も、MGMとオリックスが大阪に伝えることができたかもしれないグローバルな視点を、和歌山側に伝えることができなかったのではないか。

今回の件から学ぶとすると、繰り返しになるが、競争が激しくて難易度の高いIR業界で日本が成功するには、国内で一般的になっている日本に焦点を当てた偏狭な見通しだけでは不十分であること。大阪のリーダーたちの良い例のように、IR開発を目論む自治体のリーダーが想定している莫大な外国人観光客の収入を引き込みたいなら、より広くアジア地域以上の広さに目を向ける必要がある。

IR計画を持つ各地方自治体は、数年ごとに定期的な人事異動でIR事務局に出入りする自治体の官僚に任せきるのではなく、深い専門性を養うスタッフとともに独自のシンクタンクたるものを持つのが賢明である。

和歌山県知事が政府からの情報に頼りすぎたという過ちは、日本のIR開発においては地域的および世界的な視野を持たないことによる一例かもしれないが、今後も同じような失敗が起きることも予想できる。(AGB Nippon)