今週、IR整備とは関係ないところで新たな政治スキャンダルが起き、結果的に連立与党の公明党でカジノの合法化を表立って推進していた遠山清彦衆議院議員を失うことになった。間接的だが政府レベルでの日本IR産業の未来には打撃となるのは間違いない。
2つの重大なミスにより、遠山氏は在家仏教の創価学会を支持団体に持つ公明党でのキャリアを終わらせた。まずは緊急事態宣言下で、国民に要請していたルールを破り、銀座の高級クラブ通っていたことが週刊誌に暴露された。そしてその直後、自らの資金管理団体がキャバクラ店に「組織活動費」として支出していたことが明るみになった。
遠山氏は以前からも政党の色が合わないようにみえていたが、案の定、公明党では一線を越えてしまったようだ。もし同氏が自民党員であれば、一時的な後退を意味したとしてもキャリアを左右する大きな問題にはならなかったであろう。
自民党は個人レベルの汚職には楽観的な態度を持つ。政党が結成された1955年から汚職は党の風習なのか、当時も「反共産主義」を理由にアメリカの中央情報局(CIA)から直接給与を貰っていた党員もいた。
ただし宗教団体が支持基盤となっている公明党では話が別である。遠山氏は党の役職を辞任したが、結果的には議員も辞職することになった。
過去数年間、遠山氏は公明党の中でも「自民党寄り」とい言われていた。2015年に安倍晋三首相が学術界からの憲法違反であるという声を押しのけて安全保障法制を成立させる方針を示した時、政府の方針を後押ししたのが遠山氏だった。また、IR整備法案に関しても、公明党内から唯一賛成を唱えた。
遠山氏以外の党員は、創価学会の思想に基づきカジノの合法化にはそもそも反対していたか、連立政権を築いていた自民党の反感を買わないように渋々賛成していた。
しかし遠山氏は特に熱心だった。公明党のIRプロジェクトチームが結成されたとき、遠山氏が座長となったことは驚きではなかった。ジャパン・ゲーミング・コングレスなどどのイベントにも参加した唯一の公明党員だった。遠山氏以外の党員が公の場でカジノなどを推進する姿は想像することは出来なくなったともいえる。
遠山氏の政治生命を終わらせたのがお酒、女性、ナイトライフなどであったことはなにか意味がありそうだ。カジノには全く関係ないが、皮肉にも人物像とはかけ離れていない理由ともいえる。
九州の比例代表として長崎IRにとっては留任していたほうが少なからず有利に働いた可能性はあるが、短期的には日本IR全体には大きな影響は無さそうだ。
しかし長期的には問題がありそうだ。公明党から似たような人物はしばらく出てこないであろう。IR整備に関しても、世論と向き合う姿勢は間違いなく下がったともいえる。これは秋元司元の賄賂事件以降は大きな問題である。
菅政権の断固たる意志でIR整備のプロセスは進んでいる。
だが、毎年直面する世論の反対に加えて、秋元氏や遠山氏のように表立ってIRに賛成していた議員がスキャンダルを起こし続けるのであれば、日本IRの未来は明るくない。(AGB Nippon)