依存諸対策とカジノ入場料の見直し

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今年は新型コロナウイルスがメディア報道の殆どを埋めているため、20年代後半に開業する統合型リゾート(IR)に対するギャンブル依存症などの対策が関心事としては後回しになってしまっている。

政治的にも依存症対策は大きな機会になると思われるが、自民党はこの問題に対して積極的に取り組まないことには不可解な部分もある。強力な依存症対策は多くの利点をもたらすはずである。

日本IRを支持する与党の政治家はこのような問題に立ち向かう姿勢をみせることにより、国民の不安を解消し、IRに対する理解を深める道筋も作れる。また、医療や教育に関わる団体のサポートと賛同を得る可能性も非常に高い。

現状、大規模な依存症対策の構想を反対する地域があるかは明確ではない。パチンコ関連の団体などもリップサービスであっても依存症対策の強化を訴えている。また、遊技機業界全体には依存症対策の取り組みを公表する動きも増えている。

何故このような状況下、与党または一握りの気の利いた政治家が依存症対策政策の先頭に立つことはないのかが不思議である。結論として、保守的な政治家は有権者の生活状態に興味ないのか、政治的な転機をもたらす創造力に欠けていると言わざるを得ない。

2018年7月、国会ではギャンブル等依存症対策基本法を可決している。しかし、今後適切な政策が策定されるという内容に留まっていた。

2019年4月、内閣府はこの新たな法律に向けた対策を策定した。この基本案には、ギャンブルを行う場におけるATMの設置禁止、身分証確認の徹底、公共の場における広告、ギャンブル問題を抱えている人に対する入店規制を第三者視点で行うシステムの構築および47都道府県・20政令都市に相談・治療のハブを設けるなどが含まれている。しかし、この内容は強制ではなく、守らなければ罰があるかも不明。また、このような対策の資金源に関しては言及されていない。

昨年4月当時、菅官房長官は「基本計画に基づく取り組みを徹底的に講じ、依存症により不幸な状況に陥る人をなくし、健全な社会を構築していく」とコメントした。

シンガポールがIRを開発した時に策定された強力な依存症対策と比較すると、日本の依存症対策に対する怠慢なアプローチは多くを物語っている。

シンガポールのカジノ管理委員会(Casino Regulation Authority)が先週発表した年次レポートには次の文が掲載されていた。「病的賭博者率はカジノが開業した2010年の2.6%から2017年の0.9%まで下がった。これは社会的保障処置措置の効果を示唆する。」

日本IR支持者はこのデータを参考にすることが多い。IR開発に反対する勢力に対して、直観に反するようにみえるが、シンガポールをモデルケースに日本でもカジノが出来た場合、国のギャンブル依存症の率が減る可能性が高いと訴えがける。

このIR推進的な点は事実であるが、話し合いの中で失われているのはカジノの合法化後に勝手に依存症が減るという考えである。シンガポールなどでこの現象が見えているのは、日本と比べて政府が依存症対策の政策をカジノの合法化と同時に行った点が大きい。言い換えれば、シンガポールでは政策立案者はギャンブル問題に対して真剣に取り組んでいた。

また、シンガポールのカジノ管理委員会のレポートには、昨年4月にカジノ入場料を50%引き上げた結果、現地住民の入場者集が大きく減ったと報告された。2018年度には4%のシンガポール人がカジノを利用したが、2019年度にはその数字が2.7%まで落ちた。

日本政府が課すカジノ入場料を科学的根拠無いまま依存症対策の基本政策としているが、これにより高い入場料は地元住民を阻む効果があり収益性が下がることが立証された。(AGB Nippon)