日本市場のリスクに対するIR事業者の見解

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ゲンティン・シンガポール(Genting Singapore)は、日本市場に強い関心を寄せるアジアの主要IR事業者の中でも、固く口を閉ざしてきた存在であった。しかし、今週月曜日に発行された84ページの株主への回覧決議書には同社の目的に関する重要なポイントが概説されていた。

見落としやすい部分ではあるが、ゲンティン・シンガポールの取締役会が日本IRに必要な数十億ドル規模の投資を株主に細かく説明しているところが非常に興味深い。

見解としては1社ものにすぎないが、国際的なIR事業者の全てが同じリスクを調査しているにちがいない。今回の回覧決議書は、日本のIR産業に対する事業者の観点を表している。

「提案された入札に関連するリスク要因」と名付けられた章は19ページから26ページまでで、8ページ近くに渡り 5つの見出しと、15の異なる種類のリスクがリストアップされている。

主な見出しは次の通り:「日本IRプロジェクトに関連するリスク」、「法的および規則上のリスク」、「外貨変動に関連するリスク」、「競争に関連するリスク」、および「日本に関連するリスク」。

3番目の「外貨変動に関連するリスク」は単純で、日本円とシンガポールドルの為替レートが業績に影響するということ。

最後のカテゴリ「日本に関連するリスク」については、次のコメントから企業としての考えが伺える。「日本は台風や地震などの自然災害に対して脆弱であり、他の自然災害、人災や高度感染症などが発生する可能性があります。また、テロ攻撃や戦争により、プロジェクトコ社(ProjectCo)が運営している地域との往復旅行および経済活動が減少し、IRの訪問者数に悪影響を与える可能性があります。」

「法的および規則上のリスク」には、3つの可能性がグループ化されている。「日本の法律および規則の遵守から生じる問題」、「マネーロンダリングにカジノを使おうとする犯罪者から生じる問題」、「他の当事者との法的紛争から生じる問題」。

さらに興味深い一節は、「ギャンブルに対する日本の国民の態度が変わらないという保証はありません。一般の人々がギャンブルは好ましくないと感じた場合、日本ではギャンブルが受け入れられない可能性があり、不利な規制や、日本に居住する訪問者が支払う入場料の変動につながる可能性があります。」

詳しく書かれていないが、ゲンティン・シンガポールは日本の政治的変化がIR投資に潜在的なリスクをもたらすという感覚を持っているようだ。

「競争に関連するリスク」は2つあげられている。そのうちの1つは、ゲンティン固有のもので、ゲンティン・シンガポールのIR開発は、ゲンティン・マレーシア(Genting Malaysia)など、ゲンティン・グループ内の事業体の管理下にあるプロジェクトと競合する可能性があるということ。

しかし、それ以上に重要なことは、時間が経つにつれて日本市場の独占権が消滅する可能性があるというリスク。「グループが日本IRプロジェクトの入札に成功し、日本でIRを運営する場合、プロジェクトコはその他2つの日本IRとの競争に直面する可能性があります。また、最初のIR地域の承認から7年後に、IR地域の数を見直し、増加することが可能である。 IR地域の数が増えると、日本国内での競争がさらに激しくなり、財政状態、経営成績、キャッシュフローに悪影響を及ぼす可能性があります。」

回覧決議書の文書には「日本IRプロジェクトに関連するリスク」が8種類以上ある。「重要なリソースが投資され、IRプロジェクトが実現しないリスク」、「将来の資金調達が有利な条件で利用できないリスク」、「 IRが予想どおりに経済的価値があると証明されないリスク」「保険に関連するリスク」「労働力不足に関するリスク」、「建設の遅れに関するリスク」、「コンソーシアムのパートナーが義務を果たさないことに関連するリスク」そして「管理職に値する従業員が不足するというリスク」があげられている。

この最後のリスクについて、「日本で経験を積んだゲーミングおよびその他の熟練および非熟練者、または日本で働く意思がある労働者のプールは限られているかもしれない」と書いている。

これらすべての潜在的なリスクにもかかわらず、株主への回覧決議書では同社の取締役会が日本市場の可能性は挑戦をする価値があると考えていることを明らかにしている。

ゲンティン・シンガポールの取締役会にとってこの回覧決議書は、今後何らかの問題が発生した時に備えて、株主の批判から守るための内容になっている。しかし私たちにとっては、国際的IR事業者の幹部の心を覗く機会でもある。(AGB Nippon)