「愚か者は1000回死んでも、賢者は一回に限る」。シェイクスピアの言葉を基に作られた英語の諺は、再び見送りとなった北海道のIR誘致に当てはまるのではないか。
北海道は新年度予算案が発表し、それにはIR関連の予算が含まれていなかった。
鈴木直道知事は2019年11月から今ラウンドのIR誘致を見送る意向を示しながら、将来的なIR計画の可能性も述べていた。
鈴木知事は当初の決定からぶれることは無かったが、苫小牧市や民間企業の中ではこれを「ノー」と捉えず、IR誘致に向けて1年以上もロビー活動を続けていた。その活動の中にはメディアを活用してIR誘致の再開を仄めかす内容も含まれていた。
政府のIR区域整備計画の申請期間が今年の10月に開始する。道庁は事業者選定や区域認定計画作成の予算を持たず、道庁の担当者も選定していない状況であり、抵抗を続けてきた者も諦めを覚えるのではないか。
さらに、今ラウンドのIR誘致に関わる可能性がある自治体、東京都および愛知県の沈黙にも注目するべきである。
愛知県の大村秀章知事は最近、高須クリニックの高須克弥氏や犬猿の仲である名古屋の河村たかし市長が率いる右派によるリコール運動に追われている。
ただし署名の8割以上が無効となり、大村知事は今回のリコールを免れ、署名活動を呼び掛けたライバル達も全国ステージで屈辱を受けた。
いずれにしても愛知県の政界は依然として騒がしく、最後の最後で大村知事がIR誘致を決定する状況ではない。IR誘致へのゴーサインは新たな論争を起こすため、不人気な政策を始める余裕もない。
そうなると東京が最後に手を挙げる可能性が出てくる。小池百合子都知事は7月4日に都民ファーストが有利な立場でいる都議会選挙を控えている。その後には多くの問題を抱える東京五輪も未だ開催される予定である。
7月には小池知事の都民ファーストが再び都議会の優位を守り、8月には横浜の市長選で横浜IRの動きが止まる可能性がある。また、東京五輪が大きな問題なく開催されれば、その時点で東京もIR誘致の正式な開始が発表される可能性はある。
これはあくまでも一つのシナリオにすぎず、多くの物事が順調に進む必要があるため、予想することは非常に難しい。(AGB Nippon)