日本のIR整備の問題について、安倍政権は圧倒的な力で野党と大多数の国民の意見を押しのけ、初期段階から政治的なブルドーザーのように振る舞ってきた。確かにこの手法で長い道のりを歩んできたが、犠牲が増しており、限界が見え始めている。
今回の500ドットコム社に関連した汚職事件においても、この象徴的な手法が伺える。
露出度の高い事件ではいつものように、検察は(違法に)情報を日本のニュースメディアに漏らし、発覚した新たな展開は更に酷いものとなっている。検察側の情報を真に受けた場合、事件の流れは次のように進んだとされる。
2017年9月28日、500ドットコム社の顧問の紺野昌彦氏が、必要な税関申告を行わず香港から日本に2250万円(約2万7000米ドル)の現金を日本に持ち込んだ。
その後、数週間かけて紺野氏と同僚の中里勝憲氏はこの現金をバッグまたは封筒に入れ、当時は日本のIR事業者を目指していた500ドットコムに代わって日本の議員6名に賄賂として渡した。
最大額の300万円は当時IR政策を担当していた内閣府大臣の秋元司氏に渡されたとされる。秋元氏は検察に逮捕され、現在も拘留中。
同じ罪の疑いがあるその他5名の議員は、それぞれ100万円という比較すると低い金額を受け取ったとされているが、今のところは自由の身である。この5名の中には、カジノ推進派の議員として有名な岩屋毅氏の名も含まれている。岩屋氏はIR関連イベントに多く参加し、何度も基調講演を行ってきた。
贈賄を受け取った政治家の中で唯一与党の自民党員でない下地幹郎氏は、賄賂を受け取ったことを認めている。
現在の状況を整理すると、2017年に賄賂を受け取ったとされる6名の議員の名を500ドットコムの日本顧問の証言により検察は掴んでいる。6名のうち1名が容疑を認め、他の5名は否定している。まったく同じ証拠が6名全員に関連しているが、1名が容疑を認めている中、与党の5名は無実であると世界に信じさせようとしている。
さらに興味深いのは、安倍政権と比較して、大阪維新の松井一郎大阪市長が今回の問題をどのように扱ったかが際立つ。
松井市長と同胞の吉村洋文府知事は、この種の腐敗に対して寛容でないことを明確にした。下地幹郎氏の辞任を拒否し、代わりに彼を追放した。更にIR業界に関係する企業または個人は、今後議員の資金調達パーティーには歓迎されないことを規定とする新しいポリシーを追加した。
しかし安倍政権は菅官房長官を通じて反対の立場を取り、500ドットコムの贈収賄の疑いはIR政策とはまったく関係がなく、無関係な気晴らしに過ぎないことを示唆した。賄賂を受け取った可能性のある議員を罰する話はなく、公然たる忠告も与党内での賄賂防止のための動きなどもない。菅氏は、日本の人々が最終的に肯定的な結果を見ることができるように、IR整備を予定通りに進めることだけを約束した。
初めてのことではないが、安倍総理と菅官房長官は、誰にも止められない状態になっている。彼らが行っている公的議論は非論理的であり、明らかに偽りでさえあるが、野党は分裂し力がなく、説明責任を追及するためには哀れであることを知っている。完全に腐敗しているという一般的な印象を残しておきながら、それを問題視しない。代替勢力は存在しないことは与党は確信している。
安倍政権は日本の大衆から孤立しているが、現在IR入札に従事している地方自治体にとって話が違う。自治体レベルでは選挙で敗北する可能性があるため、地元の世論に直接さらされている。
国政レベルで野党は2016年に可決したIR推進法を廃止する国家政策を完全に覆す法案を計画しているが、この努力は確実に失敗するであろう。安倍政権は法案を却下し、その行為自体も困難ではない。
一方、自治体レベルでは、500ドットコムの贈収賄スキャンダルによって実際には危険にさらされる可能性がある。
保守側の北海道知事は既にIR入札を拒否し、与党の議員がイニシアチブを支持することができないことが重要な要因となった。千葉市長もIRレースから撤退したが、スキャンダルがその決定に影響したことを否定している。
残る最大の戦場は横浜。国内最大のIR認定地域になる可能性がありながら、市政がすでに山下ふ頭のIR整備政策に反対する地元の声と戦っている。 500ドットコムのスキャンダルが横浜IR計画を中止させる原因になれば、それこそ最大な影響を与えることになる。
他の候補地、特に大阪と長崎では、政治家による長年の準備によりIRイニシアチブに対して地元住民は寛容であるため、おそらくこのスキャンダルにさらされる可能性は低いであろう。(AGB Nippon)