世間の目の届かないところで心配事を抱えているとしても、安倍政権のIR戦略は公に問題がなく、進路を変えず前進あるのみと振る舞うままである。このやり方は以前にも見たことがあるもので、そう遠くない歴史を辿ればこれが2020年東京オリンピックの二の舞いだということが分かる。
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)がヨーロッパ中に拡大していき、世界中の政府が国境を封鎖し厳しい都市閉鎖の方針を固めているというのに、安倍首相は記者会見を開き2020年オリンピックは予定通りに開催されるだけではなく、問題なくい実行されるとまで主張するほどの余裕があった。
安倍首相の考えを知るすべはないが、表面ではオリンピックを予定通り開催するのは意志の強さの問題だと投影していた。国の代表者が不動で硬い意志を持てば、直面している危機も霧のごとく消散し、逆転勝利のようなものを収められる。
しかし、決断力と硬い意志を持つことと、頑固に現実と向き合うことを拒むこととは雲泥の差がある。リーダーシップは強い意志だけでなく、先見の明と賢さも必要とする。
残念ながらIR方針に関する今週の見出しには先見の明も賢さも皆無だった。国土交通の赤羽一嘉大臣は、13日の衆院決算行政監視委員会にて新型コロナウイルス感染症危機による整備スケジュールの変更はないと主張した。
また、赤羽大臣はそれぞれの自治体から整備申請期間の延期の要求はないと示唆している。一方で、政府から延期する方針が表明されていないため、関心を寄せている自治体も現在の申請期間に沿って準備を進めると。問題がありますよとお互いに認める許可を求め合っているようなものだ。
これは明らかであるはずだが、万事よろしいというわけはない。
現時点では、国際企業が国から国へ従業員の移動が不可能となっていることを大目に見よう。多くの国では、従業員の出社は禁止されテレワークやそのほかの体制への調整が行われているのも大目に見よう。その上に、国がいまだにIR産業の基本方針を発表していないこと、議員汚職事件の何らかの責任を取ってないことも、現在のIR方針を見届ける権力も世評がない可能性も大目に見よう。そう、全部脇に置こう。
そのかわりに、国際的IR事業者が確実に100~120億米ドル(約1兆~1兆2900億円)を投資して横浜や大阪に大型IRを開発出来るかどうか考えよう。
ラスベガスは閉鎖中。マカオはガス欠寸前の状態。各カジノ事業者は損失をかぶり、この事情がいつ終わりを迎えるのか分からない状態にある。
世界がいつまでCovid-19パンデミックの不安に駆られるのか誰もわからない。第二、三、四波により更なる都市閉鎖が要求されるのか?新型コロナウイルス感染症を打ち倒すワクチンが開発されるのか、それとも何年も先、医療専門家たちが頭を抱えることになるのか?今の段階では誰も分からないことだ。
ただし、一つ明白に分かるのはパンデミックが終わったら世界中のゲーミング産業は同じではいられない。各事業者は事業を見直し、最も良い進め方を見出さないといけない。もしかすると横浜の山下ふ頭で世界最高の120億米ドル(約1兆2900億円)IRを開発する時代が既に終わり、これからはより控えめな計画が必要とされるかもしれない。
とにかく、何事も延期なしで突き進もうとする安倍政権がおろかに見えてしまう。2020年東京オリンピックがつい崩壊したのは、カナダとオーストラリアが選手団の派遣を拒否したからだ。今回もまた、安倍政権は賢明に延期を決めるのに両社から車輪が転がる落ちるまで待つのでしょうか? (AGB Nippon)