横浜では今週、IR誘致の賛成派と反対派がそれぞれ8月の市長選に向けて体制を整い始めた。
IR誘致に賛成する林文子市長陣営は税金を費やし、IRが市の未来にとって必要であるメッセージを込めた85万5000部の新聞折り込みを発行した。
PDF形式版は既にウェブ上で入手できるが、内容に関してはカジノ要素を必要以上に軽視していると多方面から批判があがっている。
「IR」や「横浜イノベーションIR」という言葉しか使われていないことに対して、最近のニュースメディアでは「カジノを含む統合型リゾート(IR)」という言葉を使い、異なる要素を分別している形が主流になっている。
共産党の古谷靖彦氏は「カジノの売り上げでIRが整備・運営されることが一言も書かれてないのはなぜか」と疑問を呈する。
実際、「カジノ」という言葉が使われる部分は、カジノの存在自体を軽視させるためか、リスクなどは全て封じ込められるというメッセージの時に限られている。カジノはIR全体の延べ床面積の3%以下で、ファミリー層が利用する主動線から分離すると記載されている。
最先端技術を使った厳格な入退場管理を行い、カジノは「非日常を感じられる品位と清潔感ある大人の社交場」になることも綴られている。
税金がつぎ込まれている「広報よこはま特別号」だが、内容のバランスは全く取れていない。プロパガンダ攻勢ともいえる内容で、世論の懸念が事実に基づかないとはねつけ、ネガティブな要素と向き合うどころか存在しないかのような内容になっている。読み手としては「我々に任せれば何も心配することはない」というメッセージしか受け取れない。
この特別号が注目を呼び掛けているのは市の財政状況悪化である。特に目立つ2ページ目には「今後の長期的な財政支出という点では、人口減少や、超高齢社会の進展による社会保障経費の増加が確実視され、長期財政推計では2065年度まで収支差が年々拡大することが見込まれています。これらに備えていくためには、観光政策による交流人口や生産年齢人口の増加による地域経済の活性化が欠かせません」と記されている。
最後は「厳しい状況を克服し、魅力ある都市のさらなる飛躍と将来にわたる市民の豊かなくらしを支える政策の一つとして、横浜市では、IRの実現に向けた取組を推進しています」という意気込みでしめられている。
もちろん横浜市が考える「生産年齢人口」は日本の他の地域から呼び込むことになるため、ほかの地域の経済に対するダメージもある。この世代の問題に対する解決策としては、国が未だ必要性を認めていない外国からの移民政策である。そういう意味では、IR政策もこの大きな問題と向き合わなくて済むためのものともいえる。
この間、IR反対派も動き始めている。以前市議会により却下されたIR誘致の是非を問う住民投票を呼び掛けた団体の幹部を筆頭に新たな市民団体が結成された。住民投票を呼び掛ける署名活動は必要な署名の3倍以上を集めたにも関わらず、林市長は地域の経済界のリーダーが賛成するIR誘致には必要にないステップであるとみなした。この理論からすると、行政と大企業の声が世論の声である。
市民団体の名前自体は扱い辛い長さの「カジノ反対の市長を誕生させる横浜市民の会」でありながら、たしかに名前以上の説明は不要である。
このIR誘致問題に関する世論調査は常に反対側が優勢に出ているか、市長選は別の問題であるため、IR反対派は投票日までに多くの課題を解決する必要も残る。(AGB Nippon)