夢洲の交通インフラに関連する延期と不安

IR政策の延期により横浜では政治的リスクが増加している一方、大阪では夢洲を繋ぐ交通インフラが最も深刻な課題となっている。

ちょうど今から2年前、大阪・夢洲における開発計画の期待が最高潮に達していた。万国博覧会国際事業局が2025年の万国博覧会を(万博)の開催地に大阪が選んだのが2018年11月。当時は、大阪府市の開発計画は順調に見えた。

2025年の夢洲には6か月の間、世界から数百万人の観光客が訪れることが期待され、さらに同じ時期にワールドクラスのIRも開業するはずだった。夢洲IRの開発を目指す6社以上の国際IR事業者が大阪に集まり、関西地域の地元企業もIRに関連する大胆な計画を打ち出した。

しかし現状を見渡すと、2年前の盛況は遠い昔の話になってしまった。

今まで大阪のIR計画を脅かす流れをいくつかの課題を取り上げてきたが、今回は整備不足が目立つ夢洲の交通インフラの問題に焦点を当てる。

当初の最重要課題は今とは全く違った。大通りや直通の鉄道アクセスが無いころにより、大型IRと大イベントの施設を同時に建設するにあたり、重機や建設車両のボトルネックが発生する恐れがあった。

しかし蓋を開けてみれば、万博が2025年のままでありながら、IRの開業が2028年頃に押されたため、この課題は自然消滅した。

だがこの延期と新型コロナウイルスのパンデミックにより、新たな問題が浮き彫りになってきた。特にこの先10年の夢洲にが起きるかが不透明になってきている。さらに当初は莫大な投資を計画していた地元企業と経済界は、一度状況を見直し、投資に対するスタンスもシビアになっている。

近鉄や京阪などの鉄道会社も夢洲への野望を以前語っていたが、今は明言を避けるようになった。実際に既存の線路を夢洲まで繋げるとしても、それが2025年の万博の前に達成されることはなさそうである。

現在、万博とIRの相互効果は完全に失われている。6か月間のイベントとさらに数年先まで乗車需要がない鉄度路線に今すぐ投資する意味がないのはたしかだ。コロナ禍により多くの企業が苦しんでいる今、この状況は変わることはない。

大阪メトロのみが今でも夢洲への路線延長にコミットしているが、ここでも世界情勢の影響がみえる。一時期は2024年までに1000億円の開発費で、ホテルやエンタメ施設を含む250メートルの「夢洲駅タワービル」の開発案を掲げていたが、今となっては通常の駅ビルに方向性を調整している。

このような交通インフラ問題は、MGM・オリックスのIR計画よりも、実際問題、大阪の2025年万博の野心的な計画に打撃となるはずである。IR政策の延期と新型コロナウイルスにより、万博計画に対する期待感が低下している。2025年に開催されるイベントは、1年前の時点で想像されていたものより規模が縮小されることは避けられない。

結果的には夢洲への鉄道路線が1本でも、コロナ禍後に開催される万博には十分になる可能性はある。

一方、大阪IRが本当に建設されることになれば、このような問題から影響を多く受けることはない可能性もある。大型IRに向かう乗客の鉄道需要が上がることが現実に近付けば、過去にお蔵入りになっていた開発計画が数年ぶりに再開される日が訪れるかもしれない。(AGB Nippon)