「トップダウンの政治と草の根の声に寄り添う政治の明確な対立軸の象徴がカジノ問題だ… 安倍政権の延長線上で物事を進めさせてはいけない。」横浜のIR開発候補地の山下埠頭を9日に視察した野党党首の枝野幸男氏が残した言葉である。
先週金曜日の朝、間もなく首相になる菅義偉官房長官は500ドットコム贈収賄スキャンダルが公共の記憶から消え去り、2度の国政選挙に勝つまではIR問題を棚に上げると予想した。
しかし私たちの予想を菅氏が吹き飛ばすのに数時間しかかからなかった。菅氏は先週金曜日、テレビ神奈川で「IRは観光政策を進める上で必要不可欠。政府としてIRを進めていこうと考えている」と語った。「カジノだけに目が行きがちだが、家族とともに過ごせる施設やホテル、国際会議の際に家族で来て宿泊して楽しめるなど、政府としてIRは進めていこうと思っている。」
未来を予測する水晶玉は存在しなかった。菅氏の発言は我々が予想したものではなかった。
しかし、先週提示したIR開発問題を軽視するべきである政治的要素は変わらず、枝野氏の横浜訪問は、野党がこの政策を戦場に次の政権と戦うことを熱望しているようだ。
枝野氏のコメントは本来の問題の核心を突いている。IRの開発は、国民が重要視する問題に対して解決策を提供する政策ではなく、不人気なトップダウンの決定を一方的に課す例になっている。言い換えれば、カジノ問題は、日本の政治における明確な「対立軸の象徴」である。
菅政権も安倍政権同様、「ブルドーザーアプローチ」になる可能性について、大きな手がかりを得たかもしれない。菅氏は官房長官として安倍政権の政治執行者として常にトップ立場にいため、驚くべきことではない。
状況を読み解くと、国の2番から1番に昇格することを機に2つの役割の異なる要求による公的な態度の変化は、今回の菅氏ではみられない可能性を示唆している。もしそうであれば、菅政権は安倍政権よりも、与党と野党の間、首相府と各省の間、そして菅氏本人とニュースメディアの間で、激しい政治的衝突を引き起こす可能性がかなりありそうである。
国際的なIR事業者にとって、このようなシナリオは短期的には朗報であり、長期的には悪いニュースになり得る。
菅政権は腰を据え、新型コロナウイルス(Covid-19)関連の遅延を最小限に抑えて3つのIRライセンスを発行し、業界が建設段階に移行するのを支援し、反対派を押し退けることになると予想できる。
その反面、IR業界が日本の政治的文脈の中では非常に右派的なプロジェクトであり、左寄りの政党や機関の間で実質的な支持者はなく、中心主義者さえも大いに懐疑的である事実も強調される。
結局のところ、民主主義国家であるアジアの国で真の広範な政治的支援がなければ、IR業界と日本の右派との事実上の同盟関係は、政治の風が最終的にシフトするときには更に問題を深刻化させることも大いに考えられる。(AGB Nippon)