マカオのカジノ王が残したリーダーシップ問題

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マカオのカジノ業界の象徴的存在であったスタンレー・ホー氏(Stanley Ho)が死去したことについて、世界のニュースの見出しが注目した。それは中国南部と東アジア地域の歴史を良かれ悪しかれ大きく影響した証である。

現在のマカオはギャンブルのイメージが定着し、実際にも東アジアに限らず世界最大のギャンブル市場である。

この事実を作り上げたのがスタンレー・ホー氏であるといっても過言ではない。彼は1962年から2002年まで、実に40年間に渡りマカオのギャンブル業界での独占権を握っていた。

ホー氏が築き上げたカジノリゾート大国は、2002年以降衰えの逃しを見せているが、依然として莫大であり財産を潤沢に保有している。

しかし、ホー氏が残した最大の遺産であるSJMホールディングス(SJM Holdings Limited)の所有権は複雑な状況にある。ギャラクシー、メルコ、MGM、サンズ、およびウィンとともに、マカオ6つのコンセッションを所有するSJMホールディングスは、 独占権を失った以降、市場シェアを徐々に失い、最近ではマカオ全体の総ゲーミング粗利益のシェアはわずか13.3%。

とはいえ、ホー氏の後を継ぐ子供たちの中には、少なくとも二人のマカオ市場の権力者がいる。ホー氏の後継者として呼び名高いパンジー・ホー氏(Pansy Ho)は、MGMチャイナの共同議長兼エグゼクティブディレクターでもある。

もう一人は日本にも馴染みがあるメルコ・リゾーツ&エンターテイメントの会長兼CEOのローレンス・ホー氏(Lawrence Ho)。メルコはローレンス氏がSJMとは別に築いたビジネスであるため、ホー家の他のメンバーとは一線を画しており、父親の相続には深く関わっていない特殊なケースである。

メルコのリーダーシップ体制は明確である中、SJMホールディングスとその関連会社は全く正反対の状態である。4人の妻の間に17人の子供が生まれ、そのうち15人は今も生きている。ホー氏が亡くなるはるか以前から、相続人たちは資産と権力のライバル関係になっていた。

長女のパンジー氏は相続人の中で最も影響力があると考えられているが、彼女もまた、ホー氏の四番目で最後の妻であったアンジェラ・レオン氏(Angela Leong)との深刻なライバルに直面している。ホー家の家族内政治は複雑であり暗く、現実のものでなければ、複数の小説に値するとことは間違いない。

近年、SJMホールディングスにかかる最大の疑問符は、将来のリーダーシップ問題。パンジー・ホー氏が権力を握るのか、それともアンジェラ・レオン氏や他のライバルによってその計画は壊されるのか。または、今後も長期に渡りリーダーシップが明確でない状態が続くのか。

多くの独立アナリストは、SJMホールディングスのコーポレートガバナンスに対する取組みに疑問を抱いている。バーンスタイン・リサーチ(Bernstein Research)は今週、メモに次のコメントを残した。「私たちの見解では、スタンレー・ホー氏の2018年の引退をガバナンスと管理に関連する変化を推進するのではなく、同社は現状維持、すなわち機能不全をさらに定着させることを選択し、様々利益をなだめました。ヒドラのような3頭の共同議長のグループおよび根強い経営陣の昇格は、今後の独立株主の利益を示すものではありませんでした。迷走している企業所有権とガバナンス構造は、この合意によって緩和されませんでした。現在の役員会は、それぞれ異なる関心を持つ3人の共同議長で構成されています。」

バーンスタイン・リサーチはこのメモで、スタンリー・ホーの死去により、今後も物事が明確になることはという見解を述べた。「それよりも、今後は内部争いが更に激化する状況が想像できます。繰り返しになりますが、SJMの運用方法に根本的な変化をもたらし、マカオの競争の激しい市場での位置づけを高める管理とガバナンスに実質的な変更が見られるまで、私たちは傍観し続けます。」

近い将来、SJMホールディングスの見通しを測定するために、アナリスト達が注意深く見守る2つのイベントがある。

まずは6月9日に予定されている重要な年次総会で、上位4名の幹部であるデイジー・ホー氏(Daisy Ho)、アンジェラ・レオン氏、ティモシー・フォク氏(Timothy Fok)およびアンブローズ・ソー氏(Ambrose So)が再選に臨む。SJMのリーダーシップが急変する場合は、この日に起きる可能性がある。

次に今年の後半、大幅に遅れたグランド・リスボア・パレス(Grand Lisboa Palace)の開業が予定され、SJMはマカオのコタイ地区に進出する。同社は、グランド・リスボア・パレスが他の5つのマカオのコンセッション所有者との比較で、市場シェアの低下を阻止し、スタンレー・ホーなき時代の新たな成功を収めることに期待をかけている。

SJMの効果的なガバナンスを遂行する能力に対して否定的な意見が多いが、ホー一族は全てが整う日までは十分の蓄えとリソースを持っている。(AGB Nippon)