日本のIR規制は失敗の設計図

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カジノやIRを持つ国は業界を管理するために独自の規制を策定しているが、日本は当初から多くの要素を寄せ集めて混ぜ合わせたがため、現状の不運を自ら招いた設計になったのではないか。

先週AGBに掲載されたハードロック・ジャパンの日本における初期の取り組みを主導したダニエル・チェン氏(Daniel Cheng)の記事には説得力がある。日本のIRに対する取り組みの今までの失敗とその理由についての見解は分析する必要がある。

チェン氏によると、日本の政策立案者がIRを確立するために「欠陥のあるプロセス」を発案したため、ラスベガス・サンズ(Las Vegas Sands)などの業界の国際的な大手の撤退や秋元司元内閣府副大臣の贈収賄スキャンダルなどの種を自らまいた種をまいたと主張している。

チェン氏は、自治体が一つのIR事業者のコンソーシアムと提携し、最大3つのIRライセンスの1つに向けて共同で入札するという日本の計画を批判している。このようなアプローチは、主に中央政府と都道府県および政令都市とのゆるい関係性がある日本の政治体制の構造によるものなのは間違いないが、国際的なゲーミング企業にとっては悪い意味で未知の体験となっている。チェン氏が言うには、「この奇妙な並置は、政治と民間資金を交差させる不聖な組合を作り、不正利得の道の誘惑を確実に生むモデルとなる。」

確かに、野心的な政治家でいる秋元容疑者と積極的に動く中国500ドットコムは、まさにこの「不正利得の道」に巻き込まれた。東京の検察官の説明が真実である前提で語ると、500ドットコムは、秋元容疑者やその他の主要政治家への金銭的な賄賂で、北海道のスキーリゾートである留寿都村を3つのIRのうちの1つとしての選定されることを確実にすることができると(おそらく誤って)確信していた。500ドットコムはすでに留寿都村で多大な影響力を持つ旅行会社の加森観光と提携していたため、同村が確実に選ばれるための根回しが主な責務だと感じていたのかもしれない。

しかし、このような犯罪行為の枠を超えた問題として、日本独自のアプローチはまた、本来は中央政府の責任であるはずの業務を地方自治体に押し付けている形になっている。たとえば、特定の事業者やビジネスコンソーシアムの身元調査は、少なくとも初期の段階では、和歌山や長崎などの限られたリソースと権限や専門外の官僚に委ねられている。問題を抱えるビジネスは最初から取り除くために全国的な事前審査プロセスがあるべきではないか。この重要なステップは、各自治体が特定のコンソーシアムパートナーを決定するまで待つ必要があるのか。

チェン氏は、ハードロック・ジャパンを牽引していた時から、数年間に渡りこのような問題に疑問を語り続けている。彼はシンガポール人として、自国の政府が秩序正しく成功したIR開発プロセスを経るのを見てきている。

しかし、チェン氏が指摘するように、過去の教訓は日本のプロセスでは無視されている。チェン氏は長い間、同時ではなく連続したIR入札プロセスを持つことの重要性について話してきた。その狙いは最も経験豊富なIRオペレーターが最も魅力的な日本の地域の管轄区域に入札し、そこで失敗した場合は、次の魅力的な場所への入札を準備する十分な時間を与えることである。このアプローチにより、最終的に選択される3つのオペレーターすべてが実績ある企業になることが保証される。

だが蓋を開けてみればこの同時選考プロセスにより、「各地方自治体による無秩序な熱狂」が起きてしまった。たとえば、すべての主要なオペレーターは当初、大阪の扉の前に並んでいた。しかし横浜の林文子市長が手を挙げた瞬間にMGMリゾーツ(MGM Resorts)以外の全企業が横浜に急いで計画をシフトした。

そして、東京の小池百合子知事が今後IRレースに参加することを決定した場合はどうなるか。主要のIRオペレーターのほとんどまたはすべてが、昨年同様、政治的な課題を抱える横浜から逃げ出すのだろうか。

繰り返しになるが、この混乱は避けられないものではなく、むしろ日本の規制プロセスにおける設計の失敗の産物である。別の言い方をすれば、日本の政治の形は、これまでのところ、しっかりと規制されたIR業界のニーズと一致していない。

チェン氏は、「正しく進めることができないなら、やらない決断が重要である」と結論付けている。これは、世界的パンデミックの危機を通じて、私たちが打ち出してきたメッセージと全く同じ意見である。

IR自体は日本にとって有益なものになる可能性はあるが、現在の道筋はいい方向に進んでいない。真剣に考え直すことが必要であり、ギャンブル依存症や犯罪組織などの国民の懸念を公的に対応しなければならない。IR開発には説得力もあるが、政府はそれを公的に説明するよりは与党としての権威で押し切る力に頼っている。

日本のIRの成功が危機にひんしている。(AGB Nippon)