ガナパティー(Ganapati PLC)は日本市場に日本文化の要素を含むコンテンツをオンラインカジノ産業に持ち込んだことで有名な会社である。そのガナパティーの設立者である木下勇東氏が先週賭博罪により台湾で拘留され、有罪判決を受けた場合は3年以下の懲役が科せられる可能性がある。
近年オンラインカジノ産業で目立っていたガナパティーは、日本発をテーマに市場に参入した。2017年1月に心意気を語った同社の取締役の言葉がそれを表す。
「日本ではギャンブルというものは深く根付いており、大金への道というイメージよりは一種のエンターテインメントとしてみられています。日本のエンターテインメント産業は世界有数の規模と技術的進歩をみせており、国際的に認められ称賛を浴びています。このエンターテインメントとギャンブルの要素を統合することにより、日本の文化に忠実なテーマによるエキサイティングなスロットゲームや、格闘ゲーム、ソーシャルゲーム、即時に結果が出るインスタントゲームなどを開発することが出来ます。この国への関心が再び高まっている今、非常に人気が出るコンテンツのライブラリになっています。我々のゲームを通して日本文化をショーケース出来る事を嬉しく思います。」
ガナパティーは確かに日本の文化、歴史、漫画などをテーマにしたコンテンツを数多く開発し、ある程度の売り上げもあったと思われる。実際、東京の六本木ヒルズに加え、ロサンゼルス、ロンドン、マルタ、エストニアのタリンおよび台北などにもオフィスを持っていた。
しかし、2020年に入ってからガナパティーはうまくいっていると言い難い。
先週、設立者の木下勇東氏にトラブルが訪れた。台湾の警察は数ヶ月の調査を経て台北の内湖テクノロジーパークに位置するゲーマトロン・スタジオズ(Gamatron Studios)の家宅捜査に踏み切った。その結果、31人が拘留され、そのうち木下氏に続き、オフィスマネージャーの女性1人とエンジニアの女性1人、合計で3人の日本人も含まれている。
現地の警察によると木下氏はゲーマトロン・スタジオズを2019年1月に技術会社として登録し、内湖テクノロジーパーク内のオフィスを借り始めた。その後、現地の台湾人スタッフも雇用し始めた。また、木下氏のもとで45を数えるギャンブル用ウェブサイトのためにゲームを開発し、そのギャンブル行為による収益から5%から8%のコミッションを受け取っていたとされる。木下氏は身の潔白を主張している。
このゲーマトロン・スタジオズとガナパティーの関係性も明確になっていないが、アジア・ゲーミング・ブリーフがガナパティーCEOのジュリエット・アデルスティーン氏(Juliet Adelstein)から頂いたメッセージによると、木下氏の個人的な繋がりがあるにもかかわらず、二つの企業は完全に別のものであるとのこと。
また、アデルスティーン氏は「明確に言います、木下氏はガナパティー・グループの設立者です。しかし彼は長い間、同社の管理および運営に直接関わっていません。私が役員になり、後にガナパティーPLC(現:ガナパティーLtd.)のCEOとなった理由の一つは、グループ全体がアジアへの依存から脱退をもたらしながら、木下氏が同社から離れる機会を与えるためです。彼は現在台湾を拠点とし、エグゼクティブ・ゲーム・プロデューサーとしてゲーマトロン・スタジオズの社員です」と続けた。
ガナパティーは日本の規制に影響を受けたこともある。
証券取引等監視委員会が2020年3月13日に合同会社GPJベンチャーキャピタルという企業に関するプレスリリースを発表した。その内容は「証券取引等監視委員会が合同会社GPJベンチャーキャピタルに対する調査を行った結果、当社の代表社員と総括責任者が無登録で合同会社の社員権及び集団投資スキーム持分の募集の取扱いを行った事実が認められた。証券取引等監視委員会は東京地方裁判所に禁止及び停止を命ずるよう申立てを行った」とういうものだった。
ガナパティーとの繋がりはGPJベンチャーキャピタルが募集した資金がどうやらガナパティー・グループに投資されたというところにある。また、代表社員の松橋知朗氏は以前にガナパティーのウェブサイトで「チームメンバー」と紹介されていたが、そのページは今削除されている。
アデルスティーン氏のメッセージでは「これはガナパティーに対するものというわけではありません。ガナパティーのために募金を行ったGPJという会社に対する問い合わせは行われたが、ガナパティー・グループに所属していません。GPJがこれまでの募金を継続するために特定なライセンスが必要かどうか調査するよう金融庁が依頼されたが、不法行為の主張や警察沙汰もなく、業界を取り扱うマスメディアが言うような『詐欺容疑』などについての言及もありませんでした」とのこと。
特に新型コロナ感染症が去った後、オンラインギャンブルが今後の動向になると考えるアナリストが多くいる。ガナパティーは業界の開拓段階で日本のモチーフをいくつか取り入れたが、同社が最近に遭った痛い目は、オンラインの世界を開拓することにリスクが付き物だと物語っている。(AGB Nippon)